月刊ウインド「私がメガホンをとったら」2004年7月号

渡り鳥よ新潟の街に!

 新潟市古町通四番町六三八番地。こ
れは小学校五年生までの私の本籍地で
ある。また、この住所は私が母親の胎
内にいた時の居所でもある。この住所
はどこかというと、新潟日活の真向か
いなのだ。
 そのせいもあるのか、邦画の中では
日活映画が好きである。きっと母親の
腹の中にいながらにして日活映画の影
響を受け成長していったのだろう。
 もちろん日活映画といってもロマン
ポルノではない。(若い頃はロマンポ
ルノ女優のお世話にもなったが)日活
といえば日活アクション。その中でも
小林旭が好きだ。私にとって、「アキ
ラ」とは大友克洋の劇画・アニメでは
なく、マイトガイ・小林旭である。

 さて、小林旭主演の映画というと、
誰もが思い出すのは「渡り鳥シリーズ」。
小林旭扮する過剰防衛で神戸市警を辞
職した男・滝伸次が日本各地の港町で
悪に立ち向かう物語だ。
 ご存知の通りシリーズ第一作は函館
が舞台。また、シリーズのストーリー
の中には横浜や長崎という港町の名前
が出てくる。地名を見るとお分かりだ
と思うが、これらの港町は幕末に開港
した港町、幕末開港五港のうちの四港
である。
 ところが、幕末開港五港残りの一つ
の港町新潟は、渡り鳥シリーズの舞台
にはなっていない。第三作「渡り鳥い
つまた帰る」はロケ地・新潟といって
も実際は佐渡が舞台。新潟港は冒頭に
突堤の赤灯台が写るだけなのだ。これ
は、小林旭フリークの私にとって非常
に不満である。

 そこで、私がもし映画監督だったら、
新潟市を舞台にアキラの「渡り鳥シリ
ーズ」を撮ってみたいと思う。となる
と、映画の各シーンを新潟市内のどこ
で撮影すればいいか考えてみることに
した。浅丘ルリ子扮する新聞記者と共
に金子信雄率いる密輸組織を壊滅させ
るというストーリーで考えてみた。

 まずはアキラ登場シーン。新潟とい
えばやはり堀であろう。堀に浮かぶ小
舟に揺られながら登場してほしい。そ
してアキラと町のチンピラとの絡みは
昭和新道。今でこそ昭和新道は特浴街
であるが、昔は飲み屋街だった。ここ
で密輸組織を追っているルリ子と出会
う。チンピラを片付けた頃に密輸組織
のボス、金子信雄が登場する。
 金子信雄に見込まれ飲みに行くのは
もちろん「キャバレー香港」。フロア
ショーで官能的ダンスを踊るのは勿論
白木マリ。

 アキラが訪れるルリ子の自宅は他門
川のバラック。歳の離れた弟、病気の
父と貧しいながらも楽しく暮らしてい
る。アキラは家庭の雰囲気を味わうが、
決して溶け込むことはない。ロマンス
の花が咲きそうで咲かないのが渡り鳥
シリーズである。デートシーンは日和
山の展望台で。

 さて、渡り鳥シリーズ一番のメイン
イベントは、アキラとジョーの決闘シ
ーン。決闘の地は万代島の魚市場とい
うのでどうだろう。新潟砂丘のど真ん
中というのも考えたが、邪魔が入りに
くそう(いつも邪魔が入って水入りと
なる)なので、街中にあるガランとし
た場所ということで魚市場にした。

 そして最後は西堀での民謡流し。ア
キラが歌う新潟甚句で皆が踊る。アキ
ラを探して民謡流し会場まで来るルリ
子。しかしアキラはすでに船上の人。
渡り鳥はまたさすらうのであった。

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