キリンビバレッジ「天然育ち」は1996年春に発売された。前年まで販売された同社「シャッセ」が100%果汁に炭酸を入れたというバブル期ならではのプレミアム飲料だったのに比べ、果汁は30%、微炭酸、天然水という当時の流行にならった内容になっている。
特筆すべきは、CMタレントに当時デビューしたばかりのパフィーが起用されたことである。デビュー曲「アジアの純真」がCMソングとなり、曲のヒットと共に「天然育ち」も好調な売上をあげた。翌1997年には、パフィーのCDジャケットのイラストを手がけたイラストレーター、Rodney A. Greenblatのイラストによる「パフィー缶」が発売され、「パフィー=天然育ち」というイメージが定着した。この頃、テレビ朝日系の深夜番組「PAPAPAPAパフィー」がスタートしたが、キリンに気をつかったのか、出てくる缶飲料は全て表面が書き換えられて(紙を巻いてあったような)、実際の商品が何であるかわからないようになっていた。
しかしながら、天然育ちのCMにパフィーが登場したのはこの2年だけであり、翌年1998年からはテレビCMさえ放送されなくなった。これにより、売上は激減し、天然育ちはこの年をもって終売となった。パフィーについては、1998年の一年間飲料CMに登場せず(天然育ちの色を抜くため冷却期間をとったものと思われる)、1999年になってからサントリー「ビックル」の松たか子の後継のCMキャラクターとして登場した。
以上の事柄から、いかに天然育ちがタレントのキャラクターに頼った商品販売を行っていたかお判りになると思う。「商品に自信の無い時はタレントに頼る」という広告業界の「鉄則」の具体的な例でもあった。
●1996年
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1)天然育ち ぶどう/キリンビバレッジ/4909411252717/350ml/1996年
2)天然育ち りんご/キリンビバレッジ/4909411252915/350ml/1996年
●1997年
パフィー缶でない方はこの年の後半に販売された。パフィーとのCM契約解除後の販売用に用意されたものと思われる。しかし、タイでロケが行われたパフィー缶のCMでは、こちらが使用されていた。
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3)天然育ち ぶどう/キリンビバレッジ/4909411313111/350ml/1997年/パフィー缶
4)天然育ち りんご/キリンビバレッジ/4909411313319/350ml/1997年/パフィー缶
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5)天然育ち ぶどう/キリンビバレッジ/4909411313111/350ml/1997年
6)天然育ち りんご/キリンビバレッジ/4909411313319/350ml/1997年
●1998年
パッケージを完全にリニューアルした。パフィー色を抜くためと思われる。アイテムも1種類増えたが、販売力の挽回には結びつかなかった。
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7)天然育ち すっきりぶどう/キリンビバレッジ/4909411326814/350ml/1998年
8)天然育ち すっきりりんご/キリンビバレッジ/4909411326715/350ml/1998年
9)天然育ち すっきり白ぶどう/キリンビバレッジ/4909411327118/350ml/1998年