カルピスウォーター
1991年に発売されたカルピスウォーターは日本の清涼飲料史上空前のヒット作となった。以前からコンク(濃縮)飲料であるカルピスをアウトドアでも飲めるようにという企画は過去に何度も出ていた。しかし、マーケティングリサーチの結果や技術的問題等の理由により日の目を見なかった。
発売時のキャッチフレーズは「遅れてきてごめん」。まさに遅れてきた本命ランナーといった感であったが、発売と共に大ヒット、全部のカラムにカルピスウォーターが入っている自販機も見られた。
実はカルピスウォーター発売の直前にカルピス食品工業は味の素傘下になった。カルピスは無借金経営の超優良企業であったが、カルピス以外のヒット作が無いことにカルピス首脳陣は将来を悲観し、味の素グループ入りを決めたとの事である。しかし、味の素グループ入りした直後のカルピスウォーターの大ヒットにカルピスの社員は地団駄踏んで悔しがったらしい。
その後のコンビニの普及や個食化により、カルピスウォーターは引き続き飲用され、2001年には発売10周年を迎えた。今回は発売以来のカルピスウォーター全製品をお目にかける。なお、カルピスについては地域文化誌「ばらくて」1999年夏の号に「家族の飲み物・家族の絆」にて、カルピスに関する著述をしているので、ご笑覧願いたい。
- ●オリジナル
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デザイン的にはコンク製品のパッケージをベースにしている。
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- 1) カルピスウォーター/カルピス食品工業/4901340248113/350g/1991年/
- 2) カルピスウォーター/カルピス食品工業/4901340248113/350g/1994年/
- 3) カルピスウォーター/カルピス食品工業/4901340248113/350g/1996年/
- 4) カルピスウォーター/カルピス/4901340248113/350g/1998年/
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- 5) カルピスウォーター/カルピス/4901340248113/350g/1999年/
- 6) カルピスウォーター/カルピス/4901340688919/350g/2000年/
- 7) カルピスウォーター/カルピス/4901340688919/350g/2001年/トロと私のともだちグッズプレゼント
- 8) カルピスウォーター/カルピス/4901340688919/350g/2002年/
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- 9) カルピスウォーター/カルピス食品工業/4901340336513/500g/1994年/
- 10) カルピスウォーター/カルピス食品工業/4901340336513/500g/1996年/
- 11) カルピスウォーター/カルピス/4901340688810/250g/2001年/トロと私のともだちグッズプレゼント
- 12) カルピスウォーター/カルピス/4901340689114/500g/2001年/トロと私のともだちグッズプレゼント
- ●レモン味
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- 13) カルピスウォーター レモン/カルピス食品工業/4901340296916/350g/1993年/
- 14) カルピスウォーター レモン/カルピス食品工業/4901340296916/350g/1994年/
- ●ライト
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ローカロリー版。甘味料は味の素グループ故、パルスィートを使用。
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- 15) カルピスウォーター ライト/カルピス食品工業/4901340318113/340g/1994年/
- 16) カルピスウォーター ライト/カルピス食品工業/4901340318113/340g/1996年/
- ●輸出版
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アメリカおよび台湾向け製品。「カルピス」は英語だと「カウピス」(牛のおしっこ)に聞こえるため、「カルピコ」という商品名にしている。台湾版については、中国語で「初恋の味」(難忘清純的初戀滋味)と書いてある。
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- 17) カルピコウォーター/カルピス食品工業/075545006664/355g/1991年/
- 18) カルピコウォーター/カルピス食品工業/075545006664/355g/1995年/
- 19) 可爾必思 水語/台灣可爾必思股分有限公司/4901340248113/335ml/1997年/
- ●リターナブル瓶
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東京カルピスビバレッジが業務用として使用していたリターナブル瓶。
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- 20) カルピスウォーター/東京カルピスビバレッジ/-/207ml/1995年/
- ●カルピスウォーターCMタレントの変遷
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Year | タレント名 |
1993 | 後藤久美子 |
1994 | 奥山佳恵 |
1995 | 内田有紀 |
2000 | 酒井彩名、井上トロ |
2001 | 平山綾、井上トロ |
2002 | 土屋アンナ |
- ●カルピスの起源
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カルピスの発売は1919年(大正8年)の7月7日であるが、誕生の起源は1902年(明治35年)までさかのぼる。当時仏教大学の学生で、カルピスの創始者である三島海雲がアジア大陸に渡り、モンゴルを訪れたことがきっかけである。三島はモンゴルの遊牧民から「酸乳(乳酸菌で発酵した酸っぱい牛乳)」を教えてもらい、大陸生活中ずっと愛飲していた。この酸乳を飲みつづけていると体の調子が良くなることを自ら体験していた。
三島海雲は、中国の辛亥革命を機に1915年(大正15年)に帰国し、事業を始めるが、この時頭に浮かんだのがあの「酸乳」であった。さっそく、三島は酸乳の製品化のための研究を開始するが、三島自身ノウハウを持っていたわけではないため、試行錯誤の末誕生したのである。そしてこの飲料は、カルシウムの「カル」と梵語で最上の物という意味を持つサルピスの「ピス」を合わせ、「カルピス」と名付けられた。
- ●初恋の味
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カルピスの有名なキャッチフレーズといえば、「初恋の味」である。これはカルピス発売から1年くらいたった時に、三島が後輩の教師驪城卓爾(こまきたくじ)にカルピスを飲ませてみたところ、「この一杯に初恋の味がある」と感想を述べ、「初恋の味」を宣伝文句に使ってみてはと勧めたところから来ている。
始め三島はこのキャッチフレーズを使うことに躊躇していたが、翌年驪城に再び会った時に熱心に「初恋の味」を勧められた。三島は「カルピスは子供にも好かれているのに、初恋とは何かと問われたらどう答えればよいのだ」と話したところ、驪城は「初恋の味とはカルピスの味と答えればよい」と言い、これに同意した三島は「初恋の味」を使うことにした。
ちょうどその頃日本は第一次世界大戦による好景気が訪れ、人心は明るく陽気になっていたが、そのような世情に「初恋の味」というキャッチフレーズがぴたりとあてはまり、カルピスは全国に広まっていった。
- ●水玉模様と黒人マーク
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カルピスのパッケージは水玉模様と黒人がカルピスを飲んでいるマークがお馴染みであるが、水玉模様はカルピスの起源となったモンゴルで三島海雲が見た美しい天の川である。
また、黒人マークは1923年(大正12年)に制定されたが、これは第一次世界大戦後のインフレで特に困窮している美術家を救うため、ドイツ、フランス、イタリアでカルピスのポスターの懸賞募集が行われた。その中から選ばれたのが黒人マークで、作者はドイツのオットー・デュンケルスビューラーという図案家であった。
黒人マークは1980年代になると国際化時代の背景から人種差別的な問題を提起されたり、黒人差別をかかえる国々から反対意見を展開されるようになり、企業イメージの面で不利ということで1990年に使用を中止することとなった。